隼電気株式会社

社員対談

「家族への想い」から始めるBCP

対談メンバー

もし、仕事中に災害が起きたら。お客様に連絡する。担当する現場を確認する。困っている人のところへ駆けつける。仙台を中心に電気に関わる設備工事を手掛ける隼電気株式会社のみなさんも、最初に考えたのは「現場をどうするか」でした。しかし、千葉さまが社員に第一に伝えたのは「ある程度落ち着いたら、まず家族の安否を確認してほしい」という言葉。BCP策定、訓練を通して、自分たちらしいBCPを考え続けている隼電気。その想いの源泉に迫ります。

隼電気株式会社

隼電気株式会社

事業内容:電気設備設計・施工

昭和22年の創業から80年、長い歴史に裏打ちされた信頼と技術力で、宮城県内を中心に電気設備などの設計・施工を行っている。15年前から機械設備工事にも注力し、水・空気・電気の施工管理を幅広く手がけています。ソーラー・風力発電などの実績も多く、省エネ・コスト削減の研究にも取り組んでいます。

きっかけは、東日本大震災。

学校など地域の暮らしに欠かせない施設も数多く担当しています。東日本大震災では、本社ビルが大きく損壊。当日は業務どころではない状態だったそうです。お客様からの電話は鳴り止まず、社員は各地を飛び回って修理にあたったと言います。当時はまだ隼電気で働いていなかった千葉さまも、先代の社長や社員から、そのときの話を何度も聞いていたとのこと。

先代がすぐに仮設トイレや仮設事務所を手配したと聞いて。でも、同じことが起きたら、私にはそんなにすぐに指示できる気がしなかったんです

不測の事態は、十分に考える時間を与えてくれません。突然やってきた非常時に、経営者として何を判断するのか。社員はどう動けばいいのか。震災の経験を「大変だった」で終わらせず、次に何か起きたときのために残しておきたい。その思いが、隼電気のBCPづくりの出発点でした。

BCPはつくった。でも、本当にこれ使える?

「BCPをつくりたい」そんな千葉さまの思いを受けて、総務部門の担当者を中心に策定が始まりました。インターネットなどで公開されているマニュアルを参考に、自社に合わせて内容を整え、何度かバージョンアップも重ねました。それでも、千葉さまにはひとつの違和感が残ったそうです。

つくることはできたんです。でも、現実に何かあったとき、本当にこれが使えるのかなって

そこで仙台市のBCPブラッシュアップ支援を経て、実施したのがBCPの訓練でした。舞台は、実際に工事を担当していた小学校。「現場が稼働しているときに大きな地震が起きたら?」という具体的な状況を想定し、そのとき何を優先し、どう行動するのかを参加者みんなで考えました。やってみると、同じ会社で働いていても、考えていることは一人ひとり違ったとのこと。

自分が考えていることと、ほかの人が考えていることが全然違う。『そういう考え方もあるんだ』ということがたくさんありました

人命なのか、ガソリンなのか、家なのか。それぞれが第一に思うことを伝えておかないと、いざというときバラバラに動いてしまうと思いました

マニュアルを読んでいるだけでは見えなかった、一人ひとりの考え方の違い。それを知ることが非常時への備えの第一段階であるということが大切。そういったことは、具体的に動いてみないとなかなか気づけなかった部分なのかもしれません。

まず家族を。BCPで伝えたかった社長の思い。

訓練で社員たちは、現場のために何ができるのかを真剣に考えていました。その姿を見て、千葉さまは、会社として一番大切にしたいことに改めて気付かされたようです。

みんな現場のために何をするかを一生懸命考えてくれました。でも私は、その姿を見れば見るほど、まずは家族の安否を確認して安心してほしいと思ったんです

この思いを一部の参加者だけでなく社員全員に伝えたいと考え、後日あらためて全社でもワークショップを行ったとのこと。千葉さまは社長に就任したとき、「社員が幸せな会社をつくる」と宣言しました。健康、売上、人間関係。その三つが正三角形のようにバランスよく、大きくなっていく会社にしたい。そのために、働きやすい作業着を取り入れたり、コミュニケーションを深めるために朝礼で大縄跳びをしたり、社員同士をニックネームで呼び合ったり。ちょっとユニークな取り組みも、その根っこにあるのは「社員が幸せに働ける会社にしたい」という思いです。

社員の家族にも、勤めていてほしいと思ってもらえる会社をつくりたい

経営に対する千葉さまの考え方と、隼電気のBCPは一本の線でつながっていたのです。

非常時を考えたら、普段の仕事まで変わった。

BCPの策定、見直し、訓練がもたらした変化は、災害への備えだけではありませんでした。みなさん、現場での訓練に参加してみて、実際に災害が起きたらどうするかを、これまで深く考えられていなかったとのこと。それからは現場に入るときにも、「最悪の場合、何が起きるだろう」と想定して動くようになったといいます。

さらに、自分の意見を出し、ほかの人の意見を否定せずに聞くというワークショップでの経験は、普段のコミュニケーションにもつながっています。社員同士が意見を出し合う姿を見ながら、社長自身も「みんな、ここまで考えられるんだ」と驚くことも多いそうです。

もともと社内ではニックネームで呼び合うようにしているのですが、ワークショップを経て、これまでよりも気軽に声を掛け合えるようになった気がします。若い世代の社員からも意見を吸い上げやすくなりましたね

もちろん、具体的な備えも進んでいます。たとえば、ソーラーパネル付きのポータブル発電機。会社の倉庫にしまっておくのではなく、社員の自宅に置いてもらい、普段はキャンプなどで自由に使っていいことにしているそうです。

普段の生活を豊かにしながら、何かあったときにもそれが支えになる。そういう状態が理想的だと思っています

非常時だけの特別な仕組みではなく、普段の暮らしを豊かにする延長線上に「備え」を置く。それが隼電気らしいBCPともいえます。

自分たちの備えを、いつか地域の備えに。

隼電気のBCPは、これで完成したわけではありません。むしろ訓練やワークショップをやったことで、「これからやりたいこと」も見えてきたようです。

Sさん、Kさんのように、これから入ってくる人たちにも、今の考え方を継承していけたら

会社の人だけではなく、現場にいる職人さんや学校の先生、地域の人たちとも、何か起きたときに協力して動けるようになれたらいいとのこと。千葉さまも、備蓄をさらに充実させることに加え、会社にあるポータブル発電機を活用して、災害時に地域の人たちが利用できる「充電スポット」をつくれないかと考えています。

最初は、自分たちの会社を守るために始めたBCP。でも、社員と一緒に考えていくうちに、隼電気では、その範囲は社員の家族、現場、お客様、そして地域へと少しずつ広がっていきました。BCPは、一度マニュアルを作ったら終わりではありません。「もしも」のとき、自分たちは何を大切にするのか。誰を守りたいのか。そのために、普段から何ができるのか。それをみんなで話し、考え、試してみる。そうやって少しずつ自分たちのものにしていくことが、BCPを「身につける」ということなのかもしれません。

現場の自主性が向上

訓練を重ねることで、各現場ごとに具体的なイメージできるようになり、安全確認・避難誘導・関係者への指示の状況共有がスムーズに。

日常生活との融合

発電機やバッテリーを社員に配布し、家族でのキャンプなどで操作を習熟してもらうなど、非常時のための取り組みを取り入れながら、日常を豊かにする。

安心できる組織づくり

まずは家族の安全を第一に考えてという経営者の想いが浸透するなど、経営者と社員の関係が円滑になり、安心できる組織づくりへ。

写真:SENCE OF WONDER
インタビュー・⽂:太⽥伸志(Steve* inc.)

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